日本の大企業の採用は意味分からん

はてぶでたまたま見かけたのだが、いろいろ思うところあったので書いてみる。
ちょっと煽りっぽく書いてありますが、ご容赦を。
元ネタは↓

キャノン株式会社の新卒採用活動及び大学院教育に関する見解について:文部科学省

いきなり精神論

教育歴に関わらず、全ての入社者に共通して求めている能力
1. 三自の精神(弊社行動指針)
自発:何事にも自ら進んで積極的に行うこと。
自治:自分自身を管理すること。
自覚:自分が置かれている立場・役割・状況をよく認識すること。

こういうの好きだよね。
指針をおくことは別に構わないと思うのだけれど、どうせ守れもしないし認識すらされない指針なんて何の意味があるのだろうか。
だいたいにして「何事にも自ら進んで積極的に行う」ことができる人間なんてまずいないだろう。
だからこそ企業として、従業員が「(自らの選択により)自ら進んで積極的に行う」ためのインセンティブを生み出す環境を作らないとまずいのではないのだろうか?
そしてそのために何ができるか、何を提供出来るかを示すべきだろう。

コミュニケーション能力(笑

2. コミュニケーション能力
自分の考えていることを相手に伝え、説得して、行動を起こさせる力。
チームワーク(人の和)を重視し、集団の中で自分も周りも活かすことができる力。

なんでもかんでも「コミュニケーション能力」なんて呼ぶのは止めよう。
ここに書かれていることを実現するのに必要なのは以下のようなものだ。

論理的思考
自分の考えていることを整理し、他人を説得するために必要となる論理の展開を構成する能力
文書作成
情報伝達の効率化と情報の劣化・錯綜を防ぐために必要な能力
話術
相手にnegativeな感情を抱かせずに交渉を勧めるために必要な能力
交渉術
事前の根回しや、個人ごとの性格を把握した上での交渉の段取りなどを行う能力
人脈
権利を行使可能な人物へreachするための人脈を構築する能力
信頼・人望
最重要。能力ではなく過去の積み重ねによって発生するもの

職務内容や職場環境によっては他にも必要なものはいっぱいあるだろう。
が、とりあえずぱっと思いつくものだけでも具体的に必要になるものをこうして挙げることができる。
『「コミュニケーション能力」が必要です!』なんて言うだけではわけがわからないままだ。


そしてここに書いたようなものすべてを新卒の学生に求めるのが、どれだけ非現実的か考えてみれば良い。
今の学生は、10年前や20年前に比べてはるかに複雑・多様化したシステムや技術・知識を学ぶ必要がある。
それには多くの時間が必要なはずである。にも関わらずさらに多くのものを押し付けることが現実的と言えるのだろうか?


私個人としては、こうした能力を育成するためのコストをもっと企業が払うべきであると考える。

基礎能力(笑

1. 修士号取得者(技術職)
 研究者としての学問的な知識だけでは無く、製品開発・設計といった企業活動における実務の担い手として必要な「ものづくりの基礎能力(※)」を求めています。
※弊社では入社一年次に専門基礎研修として、専門技術分野(機械・電気等)毎に技術者として必要な基礎知識、実務教育を実施しています。

注釈の意味がよくわからない。
まぁ注釈はどうでも良いとして、「ものづくりの基礎能力」とは一体何か?
いわゆるメーカーの内部で行われるものづくりは、そのプロセスや手法を含めて具体的な技術についても基本的には機密扱いである。
そしてそれらはすべて、各メーカー独自の「文化」を内包している。
これらの情報は、提携している企業や、NDAを取り交わした相手への部分的な開示が行われることはある。
しかし、それ以外の(特に法的責任範囲の不明確な)集団・個人に対して開示されることはあまりない。
つまり、現行の企業の考え方を踏襲するならば、不特定多数の学生相手にそんなものが漏れたとしたら、企業としては大問題であるということになる。
こうした現実を踏まえたうえで、「ものづくりの基礎能力」を求めることがどういうことか?を考える必要が有る。


おそらく「ものづくりの基礎能力」とは、製品開発における開発手法や手順、機器の扱い方、法律や特許、
場合によっては生産設備の知識や保守の方法などの多岐にわたる雑多な知識のことなのだと思われる。
もしこの推測が妥当だとして、機密とされる情報が多いこれらに関する情報を、体系的に学生が学習することが可能だろうか?
私はとても可能だとは思えない。

大事なのはバランスではなく戦略では?

いずれにしても特定の時期に、特定の教育歴に偏って採用をするのではなく、経営の状況を鑑みながら弊社内の需要に基づくバランスの取れた採用活動を行うことが重要であると考えています。

需要をすべて満たすようなバランスでの採用を行います!ということだろうか?
つまり、人事戦略とは関係なしに社内の需給バランスによって採用活動を行います!ということで良いだろうか?
これはよくある人事戦略も人事権も持たない人事部というやつなのだろうか?まさかそんなばかな。

まとめ

細かく見るともっといろいろ書きたいことはあるのだけれど、げんなりしているところにいろいろ書くのは億劫なので省略。
このエントリで言いたいことは以下。

  1. 精神論ではなく具体的な方法論を!
  2. なんでもかんでも学生に求めすぎ!
  3. 無理なことを学生や大学に求めすぎてやしないか?
  4. その場凌ぎでがんばります!じゃだめだろ?

の4つでした。


これじゃぁ学生も学校の先生も、開発の現場にいる人間も、採用担当の人間もみんな疲れちゃうよなぁ。